消えない退屈

 退屈に襲われて

 なにかないかと苦しむように求めて

 なにも見つからない

 あるのは何度も読んだ本

 何度も聴いた音楽

 かつては新しかった表現

 死者の書いた言葉

 死者の歌う歌

 死者はもう

 新しくはならない

 退屈から守ってはくれない


 本当に?

 何度も読んだ本

 何度も聴いた音楽

 死者の書いた言葉

 死者の歌う歌

 それでもこころは

 日々に新た

 触れるたび

 息を吹き返す

 生きた魂が遺したものは

 生きた世界につながっている

 まだ生きている自分にも

 いつか死者になる自分にも


 それでも消えない退屈は

 大切にした方がいい

 子どもの頃の日曜日

 永遠のような真っ昼間

 玩具を遊び尽くしても

 川のほとりに佇んでも

 夕暮れが遠かったあの退屈

 それは時間の心臓だから

 大切にした方がいい

 死者の退屈は永遠だから

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