最後の足場

 わたしに価値はないのでしょうか

 答えはない

 優しい人間は

 そんなことはないと慰めてくれるし

 厳しい人間は

 そんなことを訊くなと叱るだろう

 でもそれは答えではなく

 関係を踏まえた引っ張り合い

 だからあくまで自分に問うしかない

 わたしに価値はないのでしょうか

 答えはない

 沈黙は解釈に幅を許す

 わたしに価値はない

 それ以外の言葉は

 わたしに禁じられている

 わたしに価値はない

 それ以外の反語は

 わたしに残されてはいない

 ただなにも決めつけない些少な沈黙が

 わたしの生きている最後の足場を崩さない

 いまにも落ちそうな暗闇の断崖に

 つま先立ちで踏ん張りながら

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