死ぬ前のありがとう

 死にそうになかった知り合いが

 急に病気で死んだとき

 最後にもらったメッセージは

 ありがとうの一言だった

 ありがとう

 それを読んだときは

 まさか死ぬなんて思っていなかったし

 相手も思っていなかったはずだ

 それとも死ぬ予感はあったのだろうか

 どうもよくわからない

 勝手なストーリーを死者に押しつけたくはない

 ありがとう

 些細なやり取りの最後に加えられた言葉に

 それ以上の含みはなかったはずだ

 それでも結果的に死んだことで

 最後に交わした言葉になった

 ありがとう

 なにかその言葉が

 宙に浮いてしまったような

 妙なざわめきを覚える

 途切れた声のように

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