生き残った金魚

 子どもの頃に飼っていた金魚

 なんの愛情も抱かなかった

 水槽の水を換えるのも

 餌をあげるのも

 ただ面倒なだけだった

 お祭りの金魚すくいでとってきて

 なんとなく飼い始めた

 もとは四、五匹いたはずだけど

 他の金魚はすぐに死んでしまって

 一匹だけしぶとく何年も生きていた

 金魚がいつ

 どんな死を迎えたか

 不思議と印象に残っていない

 庭に埋めたような気もするが

 生命についてなにも学ばず

 かわいがった覚えもない

 飼っていたことすら普段は忘れている

 それでもときどきあの金魚を思い出すと

 懐かしさと申し訳なさを感じる

 窓辺に置かれた水槽で

 愛をそそがれず時間に揺蕩っていた

 孤独な金魚のサバイバー

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