ラストシーン

 ラストシーンが好きだ

 たとえば映画

 登場人物はなにを喪いなにを得たのか

 時間の重みと鮮明な風景

 それはもともとつぎはぎされた景色

 演じられただけの人物像

 バラバラだったものを糸でつなげた

 空気の流れる絵巻物


 ラストシーンが好きだ

 たとえば小説

 言葉の連なりは語り手をどこへ運んだのか

 白熱化した散文のそこかしこに散らばる詩

 それはもともとかき集められた記号

 文字上にだけ浮かんだ幻

 細く弱く薄いありものを糊で固めた

 観念の迸る絵巻物


 自分の死も

 好きになれるだろうか

 どんなに情けないラストシーンでも

 現実であるという以外に

 なんらの優位性も持たないラストシーンでも

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