死が知りたい

 死ぬときの感覚が知りたい

 どんなものだろう

 後戻りできない眠り

 眠るときの感覚だって

 説明しようとすれば難しいのに


 アウグスティヌスは時間について

 だれも私に尋ねなければ、私は知っている

 尋ねられて説明しようとすると、私は知らない

 と書いていた


 死は?

 死については?

 だれに尋ねられなくても、自分に尋ねる

 死を知っているか?

 死を説明できるか?

 知らない

 説明できない

 死ぬ直前の自分は

 死を知っているか?

 死を説明できるか?

 死ぬ直前の自分に

 死を知らせられるか?

 死を説明できるか?

 たぶんできない

 きっとできない


 言葉には限界がある

 ではどうやって

 死を伝える?

 どうやって

 死に近づける?

 実際に死んでみろ

 実際に死にかけてみろ

 結局はそんなところに行き着くのか?

 臨死体験をすれば

 死を語る言葉は豊かになるのか?

 どうもそう思えないのは

 なぜだろう

 経験からなにも学べなかった

 愚か者にすぎないからか

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る