からっぽ

 最近あまり詩を読んでないな

 最近あまり歌を聴いてないな

 それくらいしかすがるものはないのに

 すがることすら億劫になっている

 からっぽ

 一日中からっぽ

 からっぽに触れてくるすべてが煩わしい

 からっぽ

 なんにも触れずにからっぽ

 忘れられない記憶がよぎって

 たまに鋭く痛むだけ

 それも遠からず消えるのだろう

 自分がだれなのかとか

 自分が何歳でどんな名前だったかとか

 急速に淡くどうでもよくなってる

 人間は二度死ぬという

 肉体が死んだときと

 だれからも忘れられたとき

 肉体はまだ死んではいないが

 後の死が待ちかねて先まわりしたようだ

 自分からも忘れられて

 生がかぎりなく遠くなる

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