夜の穴

 夜に穴が開いている

 夜はいつだって憂鬱なものだが

 穴が開いているのは珍しい

 どれだけ深いのか

 暗すぎてわからない

 真っ黒だ

 吸い込まれそうだ

 井戸を見ると飛び込みたくなる

 子どもっぽい衝動によって

 穴から眼をそらせない

 深くて暗くて

 神の眼窩がんかみたいな夜の穴

 世界は神の髑髏しゃれこうべだったのか

 自分は頭骨に巣食ううじだったのか

 その穴に飛び込めば

 明るい外側に出られるのだろうか

 夜に穴がぽっかり開いていて

 眠れないまま眼をそらせない

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