死ね

 死ね

 対象を持たないささやきが

 こころの表層をただよっている


 死ね

 常習的な殺人者のようなつぶやきが

 内面の浮氷をとびまわっている


 死ね

 死ね

 死ね

 死ぬべきだれかなどいるのだろうか

 死ぬべきなにかなどあるのだろうか


 死ね

 もっとも短く

 もっとも棘の多い言葉


 死ね

 それはだれに向けられているのか

 なにに対する怒りなのか


 死ね

 死ね

 死ね

 この不機嫌で危険な言葉を

 なぜだか愛している


 死ね

 まみれた悪意からきみを救えたら

 きみも詩になることがあるのだろうか


 死ね

 神が宣告された死は

 人に告げられもするのだろうか


 死ね

 死ね

 死ね

 自分に対する遺言はそれだけだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る