死がつきまとう書物

 聖書ほど

 血にまみれた書物はないと

 言われることもある

 そのなかにある言葉が

 どれほど殺戮の種をまき

 どれほど殺戮に加担してきたか

 考えてもみろと


 しかし殺された人間を正確に数えるのが難しいように

 救われた人間を数えるのもまた

 不可能に近い

 死体の算出

 こころの観測

 もし可能だとしても

 救われた人間の数が上回ったところで

 死体は消えないし

 おびただしく血が流されたにも関わらず

 言葉に救われる人間はいる


 死がつきまとう書物

 聖書の罪を

 だれが裁くのかはわからないが

 きっとそのときには

 言葉に救われた人間のひとりとして

 自分も有罪を宣告されるだろう

 魂がまだ

 そのときに残っているのなら

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