腑に落ちない

 自分が存在していることへの

 そこはかとない違和感

 子どもの頃に時おり感じた

 いまもまた


 自分がここにいる

 自分に過去がある

 自分に来歴がある

 自分と関わった人がいる

 すべてに

 薄皮一枚の違和感

 これはみな

 本当のことだろうか


 本当は自分なんて最初から存在しなくて

 自分の過去はすべて瞬間の幻で

 自分と関わった人なんてどこにもいなくて

 なにもない場所に風が吹いているだけで

 偶然のいたずらで

 たまたまだれかの声みたいに響いただけで


 すべて嘘だと言われたら

 これほど腑に落ちることはないのに

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る