秋の哺乳類

 どうやら秋が来るようだ

 夏も春もまだ捨てていないのに

 そうやってぼくは

 周回遅れの季節を追いかけている

 涼しい風が吹きはじめても

 ぼくに届くのは

 何年も前に過ぎ去った秋

 子どものころに死んだ秋


 過去がいつでも予感の春なら

 未来は常に閉ざされた冬

 それは昨日のぼくの論理

 明日のぼくは

 秋の哺乳類

 古びた夏空を手箱にしまう


 秋

 転写された季節

 ぼくが西暦何年の季節を生きようが

 葉は色づいて枯れていく

 秋

 ぼくの後ろ向きな憧れ

 喪うことへの全力の拒絶

 黄色い未練

 秋

 不変の静けさ

 迂遠な寂しさ

 無辺の死にたさ

 秋


 きっとたぶん大丈夫だから

 狂わなくても優しくなれるから

 眠れなくても眼は閉じられるから

 恋が消えても忘れないから

 だからもう

 きみは秋の顔をしていいよ

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