筆写と演奏
琴線に触れた文章を書き写していると
その言葉を綴っただれかの
やむにやまれない魂が降りてきて
自分の身体を走り抜けるような
細胞の隅々まで理解を得るような
そんな感覚がときたま訪れる
書物は筆写するしかなかった時代は
この喜びはいかばかり深かったことだろう
写経というのはやったことがないが
聖書をところどころ書き写したことはある
文語の躍動するリズムが心地よかった
楽器を演奏する能力はないけれど
書き写すことは
演奏に似ているのかもしれない
バッハを演奏するように
聖書を書き写したなんて口走ると
鼻で笑われるだけだろうけど
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