風はなぜだか

 風はなぜだか

 死んだ人たちの声のようだ

 まだ生きていたころの温もりのようだ


 風はふとしたときに

 死者たちの記憶を運んでくる

 優しい葬送を季節とつづけている


 風は

 なぜささやいたことを恥じるのか

 だれからも忘れられた人々を

 なぜ後ろめたそうに抱擁するのか


 風はなぜだか

 胎内さえも吹き抜けたように

 生命いのちのすべてを知っているようだ

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