死ぬべきかどうか

 十二の頃に死ねたなら

 ぼくは満足して死ねたと思う

 未来がないのは残念だが

 悔いもなく幸福な人生だったと


 十七の頃に死んだなら

 なぜもっと早く死なせてくれなかったのかと

 怒り狂いながら

 人生を呪いながら死んだだろう


 いまのぼくが死んだとしたら

 どんな想いを抱くのか

 それはなぜだか見当もつかない

 感情はすり減って

 夢も希望も削れたけれど

 あの頃は知るよしもなかっただれかの顔が

 きっと眼前に浮かんでしまう

 それはたまらなく哀しいことだけど

 知らなかった方がよかったとは

 どうしてもいいきれない

 十二の頃に死ぬべきだったと

 なんど考えたかわからないのに

 あの人を想い出すと

 自信が揺らいで不安になる


 いまのぼくは

 とても死にたいけれど

 死ぬべきかどうかはわからなくなってしまった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る