寂しい殉教者

 見慣れた景色が崩れはじめる

 それは寂しい殉教者の叫び

 手にした想いが腐りはじめる

 それは寂しい殉教者の祈り


 風にさやぐ葉の一枚一枚は

 人格を持った言葉の断片

 空の淡さの秒刻みの推移は

 死んだだれかの眠りの表情


 糸が見える

 どこかへつづいている

 たどってみる

 見つけてしまう


 見つけられたものは何だったのか

 そのために生存を捧げているところの

 愚かしい影の論理とは

 狂おしい恋の反響とは

 果たして何であったのか

 何であり得たのか


 光が眼を焼く

 眼は捨てた

 言葉が眼を焼く

 眼は捨てた

 眼のない魂でうつむきつづける

 寂しい殉教者に救いあれ

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