本は友達
いつも手にして歩きまわり
どこをめくってもこころざわめく
静かな声でしか語らない友達
身体の六十パーセント以上が水分でできている友達のように
その友達の身体は言葉でできている
言葉を記した紙でできている
それはだれかの手になる被造物
だれかの生み出した言葉の鏡
だれかの記憶と想いの集積物
死んだ語り部の遺言
死んだ時間の残像
死んだ感情の甦り
本はくすんだ色あいの友達
埃をかぶってはいても
心根は優しい穏やかな友達
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