理解は遅れてやってくる

 理解できなかった本や音楽が

 あるときなぜか気がかりになり

 もういちど触れてみると

 澄んだ雪どけ水のようにこころに流れ込み

 感じとれなかった息吹きを触知できるようになる

 それと似たようなかたちだが

 不可解だっただれかの言葉や振舞いが

 ずいぶん後になってから記憶に呼び戻され

 あれはそういうことだったのだろうかと

 腑に落ちるときがある

 でもたいてい理解したときには

 その人はすでに彼方に去っている

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