指を名づける
小指に絶望と名前をつけた
小さくか細く華奢な末っ子
おさえつけられることに心底飽き飽きしている絶望
薬指に献身と名前をつけた
いつまでも一人立ちできない甘えん坊
にも関わらず他の者をなんとかして支えようとしている献身
中指に憤怒と名前をつけた
最前線に陣取り真ん中を貫く愚直な
立ち上がるだけで相手を侮辱してしまう火のように熱い憤怒
人差し指に慈愛と名前をつけた
真っ先に世界に触れたがる優しい冒険家
繊細でいて図々しく無神経でもあるまめまめしい慈愛
親指に傲慢と名前をつけた
他の者とは立ち位置が違うと勝ち誇る
孤独をだれからも隠し続ける寂しく哀れな傲慢
五指を名づけたわたしは
わたしがわたしにつけた名前は海
海という字には母がいる
母は必ずしも海ではないが
海は必ずしも母ではないが
わたしはすべての指を包み
すべての指を溺れさせる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます