嫌悪の海

 わたしが嫌いなもの

 まずはわたし

 次にすべて

 自己紹介終わり


 わたしが嫌いなものの細部

 たとえば猫よけのペットボトル

 そこに入れられたままの汚水

 たとえば十年以上貼られたポスター

 剥がすとあらわになってしまう壁の汚れ

 たとえば人を罵る土足の言葉

 たとえば少しも使わなかった色鉛筆をへし折る蛮行

 たとえば桃の汁をべとつかせた指で人の純心に触る無神経さ

 たとえばゴルフボール大の虚無を道ばたにぶちまけながら進んでいくパレード

 たとえば群青の薄明かりを火星人の侵攻と間違えたパラノイア気味の老婆

 たとえばわたし

 自己紹介終わり

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