恋の遺跡

 あの人とよく会っていた場所を通ると

 胸に鋭い痛みが走る

 いまではそこはもう

 祝福された空間ではない

 それでもぼくは

 聖堂に足を踏み入れたような敬虔な気持ちを抱いて

 痛みとの距離を測りながら

 かつてはあんなにも好ましかった場所を

 親しげな憂鬱と並んで散歩する

 住まう人を失った

 朽ち果てた恋の遺跡を探って

 まだ生きているような木乃伊みいら

 火を焚いた跡や

 神聖文字で書かれた恋歌などを

 時おり発掘したりする

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