わたしはなぜ

 わたしはなぜ存在するのだろう

 わたしはなぜ息をしているのだろう

 わたしはなぜ言葉を発するのだろう

 わたしはなぜ落ち込んだり哀しんだりするのだろう

 わたしはなぜなんてことのない並木道を歩いていて突然うずくまって泣きたくなるのだろう

 わたしはなぜ今日もだれかがまた死んだという無機質なニュースを聞いてもいまやなにも感じないというありふれた事実に動揺するのだろう

 わたしはなぜ周りの人々が楽しそうに笑っているときにふと自らの絶望やどこかしらにいる誰にも救われず気づかれもしない死者たちの海で頭がいっぱいになって溺れているようなひきつった笑いしか浮かべられないのだろう

 わたしはなぜ自分があたかもみんなと同じ温かいこころを持った人間であるというような外面を固持しながらその偽りに深く傷ついて引き裂かれて病的なまでに自分を殺したくなるのだろう

 わたしはなぜどこにも行きたくないし誰にも会いたくないし何もやりたくないというゼロの状態を変えようとする意志もないままに生きるという無報酬の苦役を続けているのだろう

 わたしはなぜそんなにも魂が死に果てて枯れ果てているというのにふと頬をかすめる風や季節を告げる花々や夜空を彩る星影や月の褪せない無表情にこんなにもまるで生きているかのように胸を躍らせたりもしてしまうのだろう

 わたしはなぜ

 わたしはなぜ

 わたしはなぜ

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