ピエロが怖い

 ピエロが怖い

 ピエロの笑顔には殺意しか感じない

 だからといって笑わなくても

 ピエロの真顔はもっと怖い

 コルロフォビア、つまりはピエロ恐怖症

 子どもの頃から恐ろしい

 夜の街をピエロに追いまわされる悪夢を何度も見た

 一度も追いつかれはしなかったので

 起きてから胸を撫で下ろしていたけど

 いまとなっては

 追いつかれたらどうなっていたかに興味がある

 街灯に照らされた夜道を疾走するピエロ

 チェシャ猫のごとく笑いだけが浮かんでいるようなピエロ

 金属バットを持っていたりナイフを持っていたり

 時により手にしている得物えものは違ったけど

 追いつかれていたら

 どう使うつもりだったのだろう

 ああわくわくする

 ピエロが怖い

 ピエロが怖すぎて

 ピエロになりたい

 ピエロに追いつかれたい

 ピエロにほふられたい

 またあの懐かしい悪夢を見ることはできないだろうか

 いまならばきっと

 嬉々としてピエロにかけよるだろうな

 なぜピエロはあんなにも殺気に満ちているのだろう

 個人的には

 それは遊びの狂気じゃないかと思っている

 遊びというのは狂気をはらんだものだから

 遊んでいる人間はみな少なからず狂っているものだから

 存在理由に遊びの童心を孕んでいるピエロだからこそ

 息を飲むほどの狂気を獲得できるのだと思う

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