夜の静寂

 静かだ

 そう思うのは何度目だろう

 静けさを感じているときにしか

 生きる実感を見出だせない

 大好きな音楽でさえ

 静けさを輝かせるための黒子

 音楽が鳴りやんだときの

 あの背筋を走り抜ける静寂

 聖霊に充たされた詩を読み終えたときの

 言葉を喪った清らかな沈黙

 廃虚より好ましい建物はない

 そこは静かで死んでいるから

 図書館より好ましい空間はない

 そこは静かで死んでいるから

 彼女とのこころ躍るさえずりあいも

 ふたりで包まれる

 宝石のような沈黙にはかなわない

 静かだ

 今夜はとても静かだ

 ぼくの魂は

 静寂にしか耳を持たない

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