マンホール

 歩道を歩いていると

 マンホールの蓋が開いていて

 通りがかる人たちが次々に落ちていく

 マンホールの蓋が開いてますよと

 ぼくが往来でいくら叫んでも

 マンホールの蓋が開いてるわけないさと

 人々は聞く耳を持たず

 そうしてまた一人

 マンホールの穴に吸い込まれてしまった

 歩幅が大きいおれは大丈夫さと

 マンホールに落ちながら言い残した男

 うつむいて歩く私は大丈夫よと

 マンホールに落ちながら言い残した女

 そうしてなんということだろう

 ぼくの足もまた次第にマンホールへと近づいているではないか

 そこに穴があるのはわかっている

 そこに穴があるのはわかっている

 それでも落ちることを避けられない

 落ちる運命をもぎ離せない

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