百万人と一人

 一人殺せば犯罪者

 百万人殺せば英雄だ

 そう言ったのはたしか

 山高帽の喜劇王

 元は牧師の言葉だそうだが

 皮肉屋の彼には似つかわしい


 ところで

 喜劇王はその生涯に

 何人の人間を笑わせたのだろう

 百万人笑わせたのなら

 彼も英雄と言えるだろうが

 本当に笑わせたかった相手は

 一人だけだったのかもしれない

 そしてその一人を笑わせられないことで

 犯罪者になったようなみじめな気持ちを

 彼も感じたことはあっただろうか

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