年老いた死の臨終

 年老いた死が

 寝床でくたばろうとしている

 死はもう起き上がる気力もない

 誰を殺すこともできない

 老いさらばえた死が

 枯れ枝のような腕を伸ばして

 視線を虚空にさまよわせる

 寝床を取り囲む者たちは

 わらいながら死の老醜を見下ろしている

 もうこれからは

 誰一人死ぬことはない

 眼前でいま死にかけている

 呪われつづけた老害をのぞけば

 いままさに死が死にかけている

 生きとし生ける者すべてに憎まれながら

 この世を後にしようとしている


 今夜

 死が死んだ

 世界中が歓喜と祝福でわきかえり

 死を悼む者はいなかった

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