幽霊のようなきみの涙

 泣いている

 きみは泣いている

 きみの涙は誰にも見えない

 そればかりかむしろ

 なぜそんなにも無感動なのかと

 人に会うごとに言われる始末

 けれどもきみは泣いている

 そうしてきみは

 みんなが泣いているそのときに

 誰の涙も信じられなくて

 人の非難する仏頂面のまま

 人々の涙の裏側にある

 背筋の凍るような残酷さに怯えている


 なるほどたしかに

 あなたたちは泣いている

 それならばなぜ

 あなたたちは自らの足が踏みにじっている者に気づかないのか

 誰からも涙を注がれない

 あまりにも稀薄な弱者たちを無視するのか

 きみは声なき声をあげる

 きみの涙のように伝わらない声で

 そうしてきみの足下にも

 きみがどれだけそれを望まなくとも

 きみがどれだけそのことで狂いそうになっても

 きみの足下にも

 踏みにじられた弱者たちの影

 無言で見上げるかそけき眼差し


 もしきみが

 優しすぎるあまりにこころの破れた

 きみの友達のてつを踏まずにいようとするならば

 落涙の報いを期待するな

 他者からの励ましを期待するな

 もしきみが

 優しすぎるあまりにこころの破れた

 きみの友達を忘れたくないならば

 見えない涙をこぼすことをやめるな

 魂を賭けた正義を捨て去るな


 決して歪んだ涙を流すな

 決して歪んだ正義を振りかざすな

 歪みきったそれらは

 人を傷つけてもてんとして恥じない

 そうしてこころに誓ってもなお

 自分が歪んでしまったことに気づいたとしたら

 そのときは足下の彼らを思い出せ

 彼らの眼に宿る光を思い出せ


 幽霊でさえ

 誰かが見つけてくれることもある

 きみの涙も

 きっとどこかで見守られているはずだ

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