朝の疑念

 朝が朝ではないような

 そんな目ざめがときにある

 嘘くさい陽光

 ビープ音のような鳥のさえずり

 違和感でしかない冷気

 窓は世界を覗かせてくれるが

 すべてが仮象かしょうに見えてしまう

 その窓は本当に窓なのか

 死霊しりょうの見せる鏡ではないのか

 朝が朝ではないことを

 なにものかが糊塗ことしてはいまいか


 夢のなかにいるあいだは

 なんの疑いも持たなかった

 風景はとどこおりなく展開し

 脳裏のうりに仮象をめぐらせて

 流れのまにまに浮かんでいた

 夢に慣れたその身体が告げる

 ここは断じて夢ではないと

 朝に慣れたその身体が告げる

 けれど断じて朝でもないと


 朝が朝ではないのなら

 窓が窓ではないのなら

 わたしはわたしなのだろうか

 わたしがわたしではないことを

 なにものかが糊塗してはいまいか

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