第23話 アンビヴァレント
寮に戻ると、僕はアリンちゃんにポーションの事を問い詰める。
「僕はね…すぐに君が死ぬ事も覚悟の上で少しでも力になろうとしてたんだよ。その報いがこれだっていうの?」
アリンちゃんはバツの悪そうな顔をして座っている。何も口を開こうとはしない。僕は彼女に怒りを覚えたが、同時に悲しかった。僕は彼女の顔を両手で掴みながら彼女を見つめる。
「何で…僕の事を裏切るような事するかなぁ…?僕がどれだけ君を気にしてるか…分かってるの?最低だよ、アリンちゃん…!!」
本気で怒ろうとしたその声は悲鳴に変わっているようだ。見開いた目からは自然と涙が出てきてしまう。
「…ごめん。ハンナが私の事を思ってくれてるって事は分かってたし、それに感謝してた…でも、また隠し事しちゃった。最低だな…私は。ハンナの足ばかり引っ張って…」
僕は彼女の言葉に涙が一層零れた。本当はアリンちゃんのしたことを許してはいけないのかもしれない。でも僕にそんなことが出来るはずなんて無かった。
「そんな事ないよ…っ…僕には君が必要なんだ…絶対に。だからこそ…君には自分を傷付けるような事はもうして欲しくない。もし黒曜鏡で君の事が分からなければ、ずっと依存したままだった…そうなるって考えただけでも怖いんだよ…それだけでも…分かって…!!」
アリンちゃんは泣きながら僕に体を寄せる。
「でも、どうやって私は…あなたに謝れば良いのか分からない…どうやってポーションの依存を直せば良いのかも…どうすれば良いの?」
無理だとは分かっていても、僕は彼女を独占したいという気持ちが抑えられなかった。彼女にキスをしながらベッドに押し倒して、そのままの体勢で抱きつく。
「仕方ないな…じゃあ、ポーションの事も…君のその痛みだって…僕が治してあげるから。君は僕に委ねていれば良いよ。今のままじゃ、ダメだもんね。」
僕はアリンちゃんにもっと頼られたかった。足を引っ張っているなんて意識も起こらなくなる程に彼女を支配したい。そんな最低な自分は彼女のポーションの依存を、僕への依存に変えてしまいたいと思った。僕が快楽を与え、苦痛を取る存在であれば、彼女は嫌でも依存するだろうと、僕は彼女に甘く囁く。
「ハンナ…分かったわ。ありがとう…」
アリンちゃんのありがとうという言葉に罪悪感を少し感じたが、それはすぐに不純な幸福感へと変わった。彼女を侵食出来る事を、僕はどれほど欲しているのだろうか。
「…ちょっと待ってて…セットアップ…」
僕は魂術で彼女の魂を分析し、ポーション欲しないように書き換えていく。
「…くっ…」
書き換える過程で、僕は過酷なポーションの禁断症状に悩まされる。分析や書き換えには彼女の魂の状態を僕にも反映させなければならないのだ。手を握り込んで不快感や恐怖感で正気を失いそうになるのをこらえる。
「…はぁはぁ…終わったかな…アレスト。」
力を抜くと、アリンちゃんと体が密着した。彼女は僕の服の下に手を入れて、僕の事を求めている。
「あ…今日は…ちょっと疲れてるから…まぁ、良いか。」
アリンちゃんは服を自分で緩めて僕を受け入れようとしていた。彼女が自然とそんな行動をしたことが、僕は嬉しくてたまらなかった。
事を終えて、彼女は裸のままベッドで眠っていた。全身に残る黒い痣や古傷は、彼女の美しくしなやかな体には似合わない。言葉では覚悟が出来ているなんて言ったが、本当は彼女には苦痛を忘れていつまでも一緒に居て欲しい。でもそれは叶わない願いだ。僕はそんな彼女の横で目を瞑った。
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