第15話 心の距離
転移魔法を使い、私達はポートフレイに戻った。エリーゼは部屋に全員を集める。
「私とカインは今まで通り、
「分かったよ。アタイは一回村に戻る。あ、でもそれだと何かあった時に情報が伝わらないか…」
ローシャの言葉を聞いたカインは、黒紫色の石板を2枚取り出した。
「これはタブレット。呪文を使って同調したタブレット同士であれば書いた内容が共有されるんだ。何かあったらこれに書くから、朝になったら確認してくれ。
あ、ハンナにも渡しておくよ。」
「ありがとう。便利なものもあるもんだね。」
ハンナとローシャはタブレットを受け取ると部屋を出て行った。
私は彼女たちの足音が聞こえなくなってから、エリーゼにある話をすることにした。迷惑でないといいと祈りながら…
「エリーゼさん…あの…ハンナについてなんですけど…」
そういえば部屋にカインがまだ残っていたのを思い出した。
「カイン、あんたは出てって。」
「はいはい。じゃあごゆっくり…」
静かにドアを閉めて、カインは外に出て行った。
彼が居なくなったのを確認し、エリーゼは話を続けた。
「何かトラブルでもあったのかしら?」
「いえ…そういう訳ではありません。寧ろ関係は良好です。
ですが…あの子とどう接して良いか分からないのです。彼女が私に向けている感情が何なのか…ただの友人だと思っているようにはとても思えない。とにかくあの子は、私に依存しています。これだけは確かです。」
エリーゼはしばらく口の前に手をやってから、口を開いた。
「それで…あんたはその時嫌だった?」
「いいえ。私を必要としてくれてすごく嬉しかったです。
ですが、ハンナの気持ちを私が受け入れて良いなんて
軽々しく言えないなと思いました。
私はいつまでもあの子と一緒に居られないわけですから、
最期の時は絶対にあの子を傷付けてしまう。
それでも、あの子は…よっぽどの事が無いと私を諦めないと分かりました…
あの子を幸せにするには…私が何をしたらいいか…それが分からないんです…」
私は、話をしながらハンナの事を思い出して泣きじゃくった。
エリーゼは、そんな私を抱きしめた。
「私だって何をして良いかなんて言えない。
だって…私はあんた程はハンナと接していないからね。
だけど、私に言えるのは彼女の望んだ事は出来る範囲でやってあげて欲しいの。そうじゃないと絶対に後悔すると思う。
そして、絶対嘘は付いちゃダメ。彼女にも、あんた自身にもね。もし嫌ならそう言わないとダメよ。
まぁ、お互いに納得出来る形で接する事が出来ればそれが理想ね。」
「…分かりました。」
両方が納得できるようにする…簡単なようで難しい。
私がエリーゼとの話を終えて部屋の外に出ると、角に何やら気配を感じた。そこにいたのはカインだった。
「何よ。聞き耳立ててたわけ?」
「バレたか…回復魔術ってのは対象の体調について知っておいた方が完璧な回復が出来るんだ。だからいつも体調の情報は集めてる。何か問題あるか?」
目的はともかく、話し方が圧倒的に気に入らない。カインはまだ続けた。
「…まぁ、そうだな。何が正解かなんか分からない。お前ですら分からないもの他の誰かが分かるワケが無い。でもな、お前には時間が無い。選択を間違えれば取り返しがつかない。お前はお兄さんを助けたいんだろ?それもやればいいさ。でも、それだけの人生にするな。お前のエゴだったとしても良い。他に出来る事がお前にあるなら、それはやっておけ。死んで後悔するのはお前だ。」
「あっそ…一応心にとどめておくわ。」
口では彼にそっけなくしたが、自分に出来る事について頭の中であれこれ自問自答してみた。
仮にハンナに何かを頼まれたら私はどこまでなら嫌じゃないのか、話を聞いてやるだけで良いのか、彼女抜きに考えてみても分からなかった。やっぱり、彼女が居なければ何も始まらない。私はハンナのいる宿に行こうとした。
兵団の玄関の方がなにやら騒がしかった。一人の兵士がこちらに走ってきた。顔には焦りの色が滲んでいた。
「どうしました?」
「人工島にある宝物庫が、何者かに襲われたんだ。魔王殿も向かったそうだ。
我々もこれより作戦を初める。エリーゼ大尉にも伝えておいてくれ。」
私はすぐにエリーゼの元へ向かった。
「エリーゼさん!人工島の宝物庫が襲われたと今聞きました!!!」
「何ですって…!?」
エリーゼはすぐに武器を取り出すと部屋を飛び出した。私も彼女に続いた。
兵団から浮島に向かおうとする皆と合流し、海の方へ向かった。
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