第133話 水樹の告白
沙月の噂の原因が水樹にあると聞かされた。
正直、何故そこで水樹が出て来るのか見当もつかない。
「水樹が原因ってどういう事だ?」
「疑問に思うのは当たり前だな。説明すると長くなるけどいいか?」
と聞かれ「ああ、大丈夫だ」と返すと
「そうだな、事の始まりは沙月が中学2年で俺が3年の時だな」
「結構昔なんだな」
中学時代に何があったのか興味が出る。
「同じ中学だったんだけど、当時はこの家によく遊びに来てたんだ」
「そうそう、あの時は毎日家に来てたよね~」
と水樹は昔の事を語ってくれた。
* * * * * *
「タカくん、ココア飲む?」
「あぁ、サンキューユウ姉ちゃん」
従妹の家に行くといつもユウ姉ちゃんが世話をしてくれる
叔母さんが仕事で遅く帰ってくるからユウ姉ちゃんが母親代わりになっていた。
「はい、お待たせ」
「いつもありがとうユウ姉ちゃん」
「それはこっちのセリフだよ。気にかけてくれてありがとう」
「叔父さんが亡くなった時に沙月と約束したから。お礼なんていらないって」
叔父さんは俺達が小さい頃に交通事故で亡くなった。
当時の沙月は父親っ子だったから相当ショックを受けて塞ぎ込んでた。
その時沙月と約束をした。
俺が沙月を守る。父親や兄の様に振る舞って沙月を守ると約束した。
中学も学区は違ったけど沙月と同じ中学に進学した。
高校もユウ姉ちゃんが通ってる咲崎高校に通う予定だ。
「それにしても沙月のやつ帰って来るの遅いなぁ」
「今日は委員会があるって言ってたよ」
「そうなんだ」
時刻は18時過ぎ。日が落ちるのも早くなり外はすっかり暗くなっている。
心配になった俺は外で待とうと玄関を開けると
「今日は送ってくれてありがとう」
「大した事じゃないよ、それじゃあバイバイ」
「バイバ~イ」
はぁ、今日もか。
沙月は俺に気づいたらしく手を振りながら
「タカ兄~、どうしたのこんな所で」
「沙月の帰りが遅いから待ってたんだよ」
「ごめんね、今日は委員会があったから」
「それはさっきユウ姉ちゃんから聞いた。早く家に入ろうぜ」
「うん!」
家に入り沙月は着替えて来ると言って自分の部屋へ向かった。
もうすぐ夕ご飯だけどその前に話しておいた方がいいかもな。
俺は沙月の部屋まで行くとドアをノックする。
「沙月、着替え終わったかー?」
「うーん、今行くねー」
「その前に話があるんだけど少しいいか?」
「いいよー、鍵空いてるから入ってきて」
言われ、沙月の部屋に入る。
「どうしたの?」
キョトンと首を傾げて聞いてくる。
こんな動作も原因の一因だ。
「今日一緒に居た奴は誰だ? 中田じゃなかったみたいだけど」
「今日は同じ委員の綾部君だよ。暗くて危ないからって送ってくれたの」
屈託のない笑顔で言う。
俺は沙月の危機管理の甘さに辟易しながら
「今週送ってくれた奴の名前を言ってみてくれ」
「え~っと、綾部君、中田君、小泉君、二ノ宮君、森君だね」
次々と男の名前を羅列していく。
「そいつらは全員友達なのか?」
「うん! 皆優しいんだよ!」
はぁ、とため息を吐く。
なるべく優しいトーンで悟す様に話す。
「どうして皆優しくしてくれると思う?」
「皆が優しいからでしょ?」
「違う。そいつらは……男は下心があるから優しくするんだよ」
「下心?」
「そうだ。そいつらは沙月に好かれたい。あわよくば付き合いたいから優しくするんだ」
「えっ? でもホントに皆優しいんだよ? そんな事考えてるとは思えないよ」
全くどこまでピュアなんだ。
まぁ今まで俺がそういった事から避けさせてたってのもあるだろうが。
「いいか? そいつらは単に付き合いたいって思ってるだけじゃない」
「どういう事?」
「付き合ってエッチな事したいと思ってるんだよ」
「えええ!? まだ中学生なのに?」
「そんなのは関係ないんだよ。特に中学生男子なんて頭の中はそういう事しか考えてない」
「そんな……」
「俺の言う事が信じられないか?」
「タカ兄の事は信頼してるよ」
「だったらこれからは男に優しくされてもおいそれとそれに甘えるな」
「……うん。タカ兄がそう言うなら頑張る」
「ああ、偉い偉い」
そう言って頭を撫でる。
沙月には窮屈な思いをさせてしまうかもしれない。
だけど沙月は俺が守ってやらないといけないんだ。
「そろそろ夕飯も出来てる頃だから下に行くか」
「うん! お姉ちゃんのご飯美味しいから楽しみ~」
それから夕飯を御馳走になって家に帰った。
沙月に注意してから一週間が過ぎた。
あれから一度も男と帰って来てはいないとユウ姉から聞いた。
これで受験に専念できる。
と言っても推薦が決まっているので面接の受け答えを考えるだけだが。
授業が終わり友達と喋っていたら遅くなってしまった。
この時間だと今日も沙月の家には行けなそうだ。
自転車置き場に向かう途中で沙月の姿が見えた。
今日は行けなくなった事を伝えようと近づくと、男の姿があった。
気になった俺はこっそり後を着ける事にした。
後を着けていくと二人は体育館裏にまでやってきた。
嫌な予感がする。
声が聞こえる位置まで移動して会話に聞き耳を立てる。
「どうしたの宮田君、こんな所まで来て」
「あ、あのさ。桐谷は……好きな男子とかいる?」
「えっ? 今は居ないよ」
「そっか」
「どうしてそんな事聞くの?」
「……お、俺、桐谷の事が好きなんだ! 付き合ってください」
嫌な予感は的中してしまった。
そして俺は気が付けば告白した男子を殴り飛ばしていた。
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