第24話 二人の秘密

 俺が天然ジゴロで水瀬が俺に好意を寄せているという疑惑。

 俺自身好意を持たれていると思ってないので疑惑としたが、水瀬ってチョロインだったのか?

 イケメンなら誰でもいいんじゃないか? 等考えてしまう。

 今まで女子と接してこなかったので、ネットの知識で変な勘繰りをしてしまう。

 俺が未だに信じられないという顔をしていると


「それで友也君、南の事はちゃんとミナミと呼ぶの?」

「まぁ約束しちゃったしな」

「グループの誰か。まぁ田口辺りに突っ込まれると思うけどどう対処するつもり?」

「突っ込まれるってどういう事?」


 はぁ、とため息を吐いた後


「昨日まで水瀬と呼んでいたのに急にミナミなんて呼び出したら二人の間に何かあったんじゃないか? と勘繰られるのが普通なのよ」

「ちゃんと説明するよ。これはただのあだ名で、陸上部では当たり前だって事を」


 そして再び溜息を吐かれ、今度は柚希が


「水瀬先輩はそのあだ名を嫌がってたんでしょ? それで今までグループの人達に黙ってた。それをお兄ちゃんが話しちゃダメでしょ?」


 た、確かに。


「でも、水瀬はミナミって呼んでって言ってきたんだぞ? どうすればいいんだ?」


 俺がそう言った瞬間、二人の口角が上がった。


「それなら」

「いい考えがあるよ」


 と嗜虐的な笑みを浮かべる二人。

 

「どうするんだ?」

「とりあえず今すぐ南にLINE送って」

「は?」


 意味が分からない。

 

「私の言う通りに送れば昨日の約束を守れて、かつ好感度も上がるからよ」

「そんな都合よく行く訳ないだろ?」


 LINEを送った程度で好感度上がるなら今頃俺はモテモテだ。

 あ、今まで送った事無かった。

 でも、昨日少しだけど新島とやり取りしたよな?

 あれはやり取りした内に入らないか。


「とりあえずお兄ちゃんは私達の言う事を聞けばいいの!」


 と何故か怒られてしまう。

 この二人が揃うと反抗出来そうもない。

 まぁ、一人ずつでもむりなんだけどね。


 しばらくして二人の指示の元、水瀬にLINEを送る事になった。


「初めてのLINE送ったけど今忙しい?」


 文章は新島と柚希が考えている。

 俺の文章じゃ気持ち悪がられるというりゆうだ。

 否定できないのが悲しい。

 俺が送ってから数分後に返信が来た。


「暇でゴロゴロしてたー。ってかLINE初めてなのw」

「ほら、去年までぼっちだったからさw」


 俺でもこう返信してたと思うけど、他人から言われるとクる物がある。

 今度は直ぐに返信が来た。


「ははは、そうだったね。でもいきなりどうしたの?」

「昨日の事で話したい事があったから」


 ここで返信が止まった。

 俺のせいじゃないよね? 二人の所為だよね!

 二人の方を見ると


「大丈夫だから待ちましょう」


 と、落ち着いている。

 言われた通りに待つ事にし、何故かスマホを凝視してしまっていた。

 それから5分後に漸く返事が来た。


「ごめんごめん、トイレいってた。話って何?」

「水瀬の事をミナミって呼ぶ約束したでしょ?」

「うん! 今更嫌だって言ってもダメだからね!」

「そうじゃなくてさ、ミナミって呼ぶの二人きりの時だけにしない?」


 ここでまた間が空くが直ぐに返事が来た。


「どうして?」

「ミナミって呼ぶの俺だけじゃん? だから二人だけの秘密にしたいなぁって思って」


 またしても返事が止まる。

 でもいきなりこんな事言われたら普通引くよな。

 さすがの俺でもこれはないと思う。

 すると返事が来た。


「分かった。二人だけの秘密ね! でも二人きりの時はちゃんとミナミってよんでね♪」

「わかったよ、ミナミ」


 照れてるクマのスタンプが送られてきた。


「買い物行かなきゃだからまた学校でね!」

「わかった。またね」


 と、ここでLINEのやり取りは終わった。


「終わったぞ」


 そう告げると新島と柚希が


「南に関してはこれでいいわ」

「そうですね~」


 俺には何がいいのかさっぱり分からない。

 そんな俺の心を読んだのか


「友崎君は何も心配しなくていいよ」


 と言ってくる。

 まるで俺は操り人形だな。


「新島先輩、これからの課題どうしましょう?」

「ん~、そうね~」


 と、俺を置いて話し合いを始める二人。

 それを何処か他人事の様に聞いている。

 

「それじゃその案でいきましょうか」

「はい」


 どうやら話が纏まったらしい。

 新島が代表して説明するようだ。


「友崎君は今、水樹を観察してるのよね?」

「ああ、一応昨日も観察してたぞ」

「とりあえず観察は続けて。それと同時に水樹の会話のスキルを盗むの」


 話題提供や話題の広げ方とかか。


「それからゴールデンウィークの後に郊外遠足があるでしょ? それまでに誰かをイジれる様になってるのが理想ね」


 イジるってあれか! たまに中居や水樹が田口イジってる所を見るな。


「それは難易度高くないか?」

「軽くでいいのよ。今の友也君がガッツリイジれる立場ではないしね」

「まぁ、善処します」


 俺が誰かをイジるのか。イジられる事は何度もあったけどな。


「安心して。学校ではちゃんとサポートするから」

「それは頼もしいな」

「家では柚希ちゃんの課題をしっかりやってね」


 俺に安息の地はないのだろうか。


「とりあえず今日はこんな所ね。そろそろお開きにしましょう」


 と言う言葉で今日の会議は終わった。

 玄関で靴を履いていると


「そうそう、学校では今まで通りでお願いね」


 あくまでも学校では猫を被るようだ。

 わかったよ。 と返事をして俺と柚希は帰路に着いた。

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