第469話決戦!VS国際テロ集団(5)対カマル

「こんなガキに・・・」

カマルの顔が青白くなった。


アランは、そのカマルを押し留めようとする。

「おい!今ならまだ・・・」

「あの少年・・・半端ではない」

ボルコフもカマルを押さえようとする。

「アランの言う通りだ、やめとけ、仮にあの少年を倒しても、敵が多すぎる」

ジャンは、すでに結果を読んだのか、よそ見をしている。


しかし、カマルは我慢ができなかった。

潮崎師匠に嫌そうな顔をするだけで、自分のことには無関心な華音に腹が立った。


「このガキ!」

「殺してやる!」

腰のナイフを引き抜き、華音の真正面に向かって跳躍、そのナイフを突き立てようとする。


その一瞬、アランは目を閉じ、ボルコフは顔をそむけた。

ジャンだけは、目をそらさない。


「馬鹿者」

次の瞬間、柳生霧冬が、つぶやいた。


「グ!ギャ・・・・」

カマルが声にならない声をあげ、その口を押え、床を転がりまわる。

そして、その顔から首、腕から手まで見る見るうちに、紫に染まる。


目を閉じていたアランが驚いた。

「カマルの口の中に、カマルのナイフが?」

ボルコフもその顔をカマルに向けた。

「自分で自分を刺したのか?」

二人とも、全く信じられないといった顔。

その目を疑っている。


ジャン

「いや、カマルは実に速い動きで、あの少年にナイフ、それも毒塗ナイフを突き立てようとした」

「そのカマルの肘を、あの少年が振り向きざまに蹴り上げた」

「実に速い蹴りだ、カマルも反応が出来なかった」

「それで、カマルの毒塗ナイフの刃は、そのままカマルの口に突き刺さった」


潮崎師匠が苦笑い。

「おい、華音、これが8割?」

「まあ、そうか」


華音は、まだ嫌そうな顔。

「毒塗ナイフでしょ?匂いでわかった」

「案外難しいんです、肘の蹴り方って」

「下手に蹴ると、胸とか首に刺さって、即死になる」

「毒が塗ってなくても即死だけど」


柳生霧冬が、のたうち回るカマルの前でしゃがみ込む。

「お前さん、ノロマ過ぎや」

「それと、ほんま、ガキなみの愚かさやな」

「それでも華音が手加減したから、生きとる」

「怒る華音なら、即、殺されとる」


柳生隆が華音に声をかける。

「解毒しとくよ、取り調べもあるし」

華音は、どうでもいいと、そんな顔。

「自分で解毒剤を持っているんじゃないですか?この人」

「でも、舌を切っているから、毒の回りは速いかな」

「匂いからして、蛇の毒と思うよ」


呆然と見つめるばかりの、アランとボルコフに潮崎師匠が声をかけた。

「おい!お前らも、華音に遊んでもらうか?」

「華音は命だけは助けてくれるようだ」


その挑発に顔を真っ赤にするアランとボルコフに、華音は言い放つ。

「一人一人でなくていい、二人一緒でも同じこと」

華音は相当不機嫌な顔になっている。

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