第467話決戦!VS国際テロ集団(3)

「うわ!いきなり!」

冷静沈着をもってなるジャンまでうろたえるほどの大音量のサイレンと船舶の揺れで、ボルコフ、アラン、カマルは近くにあった手すりにすがりつく。


しかし、そのすがりつきも、効果がなかった。

大サイレンが鳴り終わり、船舶の揺れが収まったと同時に、船を囲むかのように数多く、大きな水煙があちこちであがった。

またしても、大きな船舶の揺れが起こり、今度は貨物船に乗った全てのテロ集団が甲板や船室の中を転げまわる。


その身体を船のあちこちにぶつけ、ようやく立ち上がろうとするテロ集団の耳に、また大サイレン、そして大音量の英語のメッセージが響き渡る。


「お前達は、国際テロ集団のドラゴンヘッド」

「すでに、通信電波より特定済み」

「ただいまより、一斉に船内に立ち入り武器弾薬の押収」

「および、全員を捕縛する」


それでもジャンがメッセージを返そうとするけれど、それもかなわない。

またしても、大音量のサイレンと船舶の周囲では水煙があがり、全員が転げまわる。


そして、一際大きな水煙の後、ようやく船の揺れが収まった時だった。

ジャン、ボルコフ、アラン、カマルが目を開けると、その前には、総勢50人以上の戦闘服の男が武器を構えて立っている。



「いつの間に・・・あの水煙の中・・・船が大揺れになる中・・・」

ジャンはうめくけれど、そのジャンに戦闘服集団の中から、一人の男が進み出た。


「おい!ジャン!」

「それから、ボルコフ!アラン!カマルの小僧!」

「この腐れ外道!」

声は低いけれど、その響きに、人を刺すような恐ろしさがある。

潮崎師匠だった。


ジャンが、その声にビクッと反応。

「え・・・シオザキ先生?まさか・・・」

ボルコフは震えた。

「シオザキ先生・・・どうしてここに・・・」

アランは、その大きな身体をかがめた。

「すみません・・・これはジャンに騙され・・・」

しかし、カマルだけは別反応。

「は?シオザキ先生?何を先生ヅラ?」

「俺たちの船に何を積んであるか、わかっているでしょ?」

「ドラゴンヘッドって知っているんだから」


潮崎師匠は、そんなカマルをあざ笑う。

「は?カマルの小僧、相変わらず軽いな、その反応が」

「そんなことだから、いつまでもトップが取れない」

「それを嫉妬して、ジャンに絡んでも、実力でかなわん」

「単なる悪ガキを抜けきらん」


図星を言われて口ごもるカマルを押さえて、ジャンが潮崎師匠に聴く。

「あの水煙の中、船に?」


潮崎師匠は、呆れたような顔でジャンを見る。

「馬鹿者、お前だって知っているはず」

「俺たちは、裏柳生、忍者の末裔だ」

「揺れる船をよじ登るなんてのは、訓練の初歩だ」

「まあ、お前は苦手だったな、その訓練」


潮崎師匠は、再びカマルを見た。

「おい!カマル、その武器弾薬」

「それ・・・今、どこにある?」


これにはカマルだけではない、ジャン、ボルコフ、アランも首を傾げる。


潮崎師匠は笑いだした。

「あいつがほとんど始末をつけた、所要時間5分」


潮崎師匠の視線の先に、白衣を着た華音が姿を見せている。

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