第447話深刻な会議は続く 華音は極めて冷静、慎重

柳生隆が話を進める。

「マスコミ対策も重要になる」

「ほとんどのマスコミはテロリストの行為、つまり暴力を用いての日本占領には反対の意志を示すとは思うけれど」

「自らの社の安泰のために、恭順の意思を示す社も出て来る」

「テロリストのほうが、日本の現政権よりは強いと判断すれば、そうなる」

「そして、日常的に政府に批判的な報道をしているマスコミが、その動きをする可能性が高い」


潮崎師匠が腕を組む。

「つまり、敵の敵は味方ってことだ」

「日本政府の敵は極悪な国際テロリスト、そして、そのマスコミも自らの敵の日本政府を倒せれば、何でもかまわない」

「現政府崩壊後は、国際テロリストの御用マスコミと化し、安泰をむさぼる」

「そうなると、そのマスコミと結託している政党も、それに乗る」

「新政府において、支配的な地位は、国際テロリストに委ねるにして、手先ぐらいの地位にはつける」

「いずれにせよ、現日本政府と一緒に、国際テロリストと戦って滅びるよりは、その後の我が身の安泰を目指す」


柳生霧冬も表情が厳しい。

「それもあるけれど、単に勝ち馬に乗るってだけや」

「その際の国民や企業の犠牲なんて、何も考えとらん」

「自らを正当化する表現としては、暴力革命か」

「あまりにも現政権が低劣だから、より国民の幸福を追求するための行動を起こす」

「そのために、一定の暴力行為による犠牲も、容認されるとか」

「フランス革命にしろ、ロシア革命にしろ、その理想の是非はともかく、暴徒による暴動と、殺人ショーと化した面も否定できない」


柳生清が話をまとめた。

「おそらく、今まで話し合った全てが、あてはまると思う」

「今後は、それを頭に入れて、情報を集める」

「少しでもおかしな動きがあれば、即対応する」

「柳生事務所をコントロール拠点として、官邸とも緊密に連絡」


柳生事務所ビルでの会議は、そこで一旦終わった。


杉並への帰途の車内、いつもの冷静な顔に戻っている華音に、お姉さまたちが不安顔。

シルビア

「ねえ、華音、まじにVIPの警護するの?」

「15歳の高校生が受けるべき仕事?」

春香

「ほんまや、可哀想や、万が一あったら大変や」

「霧冬のじいさんも、潮崎師匠もついておるけど、年寄りや」

「華音のほうが今は強い、だから華音はそのメンバーにいれば、結局戦うことになる」

「しかも、各国軍の元トップクラス、半端な戦闘やない」

「勝ったにしても、怪我させられる」

エレーナ

「私も手伝いたいけれど・・・そんな猛者と戦うほどの実力はないし」

「かえって足手まといになる」

「華音ちゃんの帰りを待つのも辛いよ、ほんと」

松田明美も苦しい顔。

「結局、戦闘になると正義が悪かが、勝負を決めるんじゃなくて」

「強いか弱いか、あるいは偶然もあるけれど」

「結局は、勝った者が強いわけであって、善になる」

「そして勝者は、全て自らの行為を正当化し、敗者の全ての行為を否定する」

「それが公的な見解で、いつまでも続く」

今西圭子は華音に迫った。

「絶対に生きて帰って来て」

「嫌だもの、華音ちゃんが犠牲になるなんて」


そんな話を黙って聞いていた華音は、冷静のまま

「もちろん、最初から負ける気持では戦わない」

「ただ、勝負は実力の上下で決まる」

「偶然を利用するのも、実力の一つ、臨機応変さも重要」

「でも、いろいろ、やりたいこともあるから、生きて帰りたい」

「相手が相手なので、確約は出来ないけれど」

お姉さまたちが不安な顔をするけれど、華音は慎重な態度を変えることはない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る