第407話テニス対決 沢田文美VS華音(1)
華音と沢田文美の「一試合限定」のテニス対決は、瞬く間に学園中に知れ渡った。
「何でも瞳ちゃんが、テニス部から文学研究会に移るのを、文美が嫉妬したみたいだよ、文美も華音君を狙っていたから」
「それで、華音君を得意なテニスでコテンパンにしたいのかな」
「でもダブルスだけど文美は都内でもトップクラスだよ」
「華音君は格闘とか陸上は凄いけれど、球技ねえ・・・イメージが無い」
「コテンパンにするなら瞳と試合すればいいのに」
「いやいや、何だかんだと、華音君と遊びたいだけでは?」
・・・・そんな噂やら何やらが飛び交う中、テニス対決の当日となった。
普段はテニス部しかいないテニスコートの周囲には、学園中と言ってもいいほどの生徒や教師が観戦のため、集まっている。
吉村学園長も、観戦のため、テニスコートに歩いて来た。
そしてテニス部顧問の高田に笑いかける。
「まあ、あなた方はお遊びと思っているだろうけどね」
テニス部顧問高田は、吉村学園長の笑顔が気になった。
「学園長、何かあるのですか?」
吉村学園長は、クスクス笑う。
「まあ、見ればわかる、華音君、面白いことすると思う」
また、華音と関わった格闘系の部活の教師や生徒も、興味津々。
空手部顧問松井。
「華音君のフットワークかなあ・・・それなら文美にも対抗できる」
空手部主将剛は首を傾げる。
「竹刀とか木刀の華音は、凄いけれど、ラケットねえ・・・」
剣道部主将塚本。
「あのスコップ振りは、呆れたけれど、ラケットは軽いしねえ」
剣道部顧問佐野。
「テニスって、そんな簡単に出来ない、よく試合を引き受けたなあ」
・・・・いろんな部外者の声が飛び交う中、沢田文美はペアの小川恵美と話をしている。
沢田文美
「つい、華音君と試合したいなんて、言っちゃった」
小川恵美
「マジに大人げないなあ、文美って」
「そのままデートに誘えばいいでしょ?」
「捻挫を治してくれた恩人をテニスでコテンパンにしようなんて、呆れる」
沢田文美
「だって、それを機に、華音君にテニスを教えてさ、瞳とか文学研究会から取り返そうと」
小川恵美
「うーん・・・悪女系?」
「でも、そうなると、私にも目が出てきたなあ」
「文美にコテンパンにされた華音君を、私が手取り足取り教える」
・・・さて、そんな「悪女」のたくらみはともかく、華音がラケットを持って、テニスコートに登場。
そして、テニスコートに集まっている生徒や教師たちから、もの凄い拍手を受けている。
沢田文美は、少し顔を赤らめて、テニスコートに入り、華音に言葉をかける。
「華音君、大人と子供の試合になるけれど、結果は気にしないでいいよ」
「もし、これでテニスに興味があったら、テニス部に顔を見せてね」
「華音君にもテニスを教えたいなあと」
華音は笑顔。
「文美さん、ありがとうございます」
そして、クスッと笑う。
「手加減はいりません」
「これも鍛錬の一つなので」
沢田文美は、「え?マジでいいの?」と思ったけれど、ペアの小川恵美に「大人げない」と言われるのも気にかかる。
審判の試合開始のコールとともに、「80%の力」のサーブを華音に向けて打ち込んだ。
・・・次の瞬間だった。
当の文美だけではない、見守っていた全てが息を飲んだ。
華音の恐ろしく速いリターンショットが、コート隅に的確に打ち込まれている。
そして、沢田文美が、一歩も動けないほどのリターンエースだった。
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