第406話瞳の文学研究会への転部が決定、華音に条件がつく。

「私も・・・文学研究会に・・・入りたいなあって」

瞳は、小さな声になっている。


華音は小さな声で、「うん」と応えるのみ。


瞳の声が、また震えた。

「華音君の近くにいたくて、離れたくないの」


華音は瞳の手をしっかり握る。


瞳も華音の手を握り返す。

「だって・・・文学研究会だって、きれいな人ばかり」

「今日の女子高だって、華音君、すごい人気で」

「心配で・・・」

「華音君がすごく遠い人になって」

「私が笠女郎になったみたい・・・フラれたみたいで」

「それ・・・いやだって」

「だからね・・・華音君」


華音は、「うんうん」と頷くばかり。


瞳は、ますます華音にピッタリ身体を寄せる。

「テニス部にいると、もう、不安で仕方ないし」

「練習に身が入らないの」


華音が、ようやく、瞳に応えた。

「僕は、瞳さんを歓迎するよ」

「何があっても、守る」

瞳の身体がブルッと震える。


華音は、言葉を続けた。

「それでもテニス部にもしっかり挨拶をしてこないとね」

「理由も明確に・・・」

「瞳さんに期待しているテニス部の仲間も多いだろうし」

「いなくなると残念に思う仲間もいると思う」


瞳は、その顔を下に向ける。

華音の指摘が正確だったようだ。


華音は、瞳の手をぎゅっと握る。

「でもね、一番大切なのは、瞳さんの気持」

「テニスより文学研究会で、頑張りたいという気持ちかな」

「それが真っ直ぐであることも大事」


瞳は、またウルウル。

「ありがとう、華音君」

華音は笑顔。

「すごく困ったら、助ける」

「心配しないで」


そんな状態で、瞳の華音への相談が終わった。

その後、華音は瞳を家に送り届け、瞳の母好子に「あれこれと」説明をする。

「僕としては、応援します」

「歓迎します」


好子もホッとした顔。

「ありがとう、華音君」

「瞳自身で決める話なのに、華音君に頼ってばかりで」


華音は、好子に頭を下げ、屋敷に戻った。


屋敷に戻ると、エレーナ、シルビア、由紀が華音の部屋に入って来た。

エレーナ

「お疲れ様、華音君」

シルビア

「まあ、仕方ない、瞳ちゃんは、大事にしないと」

春香

「瞳ちゃんは気にしているかもしれんけど、周囲から見れば、いずれはこうなると思うとった」

エレーナ

「そう思う、瞳ちゃんがテニス部のままだと、辛そうでね」

シルビア

「収まるところに収まるはず」

春香

「華音、しっかり支えるんやで」


そんなお姉さま方の助言は、ほぼ不要だった、

瞳の「テニス部から文学研究会」への転部は、実にスンナリと進んだ。

テニス部2年で、華音をゲットしたいと思っている沢田文美も、文句は言わなかった。

「だって、瞳は練習中も、文学研究会の部室を見上げてばかりで、練習に身が入らないもの」

「そんなんだったら、文学研究会に入るしかないでしょ?」

「負けはしないけれど、転部は認める」


ただ、沢田文美は、もう一つ条件をつけた。

それは、華音とテニスを一試合だけをしたいというもの。

そして華音も、実にあっさり「一試合限定」で、受けることになった。

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