第394話天平衣装の試着と、当日の段取りなど

シルビアと春香の学園文化祭における万葉集を詠む服装の準備は、着々と進んでいる。

すなわち、笠女郎と大伴家持の時代となるので、天平人の服装となる。


華音と同じ奈良出身の長谷川直美が解説をする。

「全て、天平時代祭りの衣装からです」

「かなりなお姫様衣装なんだけれど」

「平安時代の十二単よりは動きやすいはず」

「原色をふんだんに使って、明るい色も多い」


それを試着した女子生徒は大興奮。


「ゆったりとして華やか」

「身体を締め付けないよね、それで軽いの」

「これがやがて着物に?」

「私は着付けが苦手だから、こっちのほうがいいかも」

「そうだよね、可愛いし、明るさがある」


などと、概ね好評になる。


しかし、華音は、相当制服にこだわった。

「他校の文化祭に出演するんです」

「それは正式な服装でなくてはなりません」

「その意味で、今、僕が着るべきは正式に制服なのです」


などと、強硬に主張をしたけれど、結局は天平官人の衣装となった。

シルビア

「場を壊してはならないでしょ?」

「もともと、華音のお家が、天平時代にさかのぼるのでは?」

春香

「従姉の命令なんや、守らんと秘密をばらす」

「指折り数えて、10本でおさまらん」


そんな脅迫やら恐喝を受けて、華音が天平官人の衣装に着替えると、女子生徒は、また大騒ぎ。


「ぷ!お人形さん?」

「丸顔が目立つ、まじに可愛い」

「公家の玉子?」

「でもさ、違和感がないの」


その大騒ぎは、それではおさまらず、全員が華音とのツーショット写真を望み、全体写真まで撮ることになった。

古代史研究会部長の鈴村律が、尻込みをする華音を説得した。

「だってね、その日は期待する人が多くてね、とても自分たちで写真を撮れないもの」

華音は、「絶対にネットにはアップしない」ことを条件に撮影に応じたのである。



さて、そんな試着騒動があったものの、当日の発表順番の会議が持たれた。


鈴村部長が提案をする。

「まずは河合学園長の挨拶と、吉村学園長の挨拶」

「華音君の学園の文学研究会の紹介」

「それから、華音君と教師たちが万葉集第3巻の3首を詠み、解説」

「それから、双方の学園の女子生徒が組んで、例の第4巻の24首の歌を詠み、解説」

「また、華音君と教師たちに戻って、最後の第8巻の二首を詠んで解説」

「締めは、私と長谷川直美さんでどう?」


誰からも異論はなかった。

華音も、教師たちと一緒に、歌の詠唱と解説なので、それほど負担はない。


当日の段取りが決まり、落ち着いていると、立花管理人が顔を見せた。

ワゴンの上に、色とりどりのケーキと、ミルクティーが乗っている。


「華やかな天平衣装に合わせまして、できるだけ可愛らしいケーキを焼きました」

「素晴らしい発表会になりますように」


ただ、その色とりどりのケーキを見た女子生徒は、その時点で色気より食い気になっている。

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