第379話華音の女子高文化祭出演に難題発生

夕食の後、集まったメンバー全員に笠女郎の歌全首と簡単な解説をPCからプリントアウトし、一旦は解散となった。


それは華音の「まずは一人で全首味わってから訳など検討しましょう」との提案によるもの。

誰からも異論はなかった。

とにかくそれぞれが一人で、笠女郎の恋歌の世界に入りたいとの想いが、共通するようだ。


長谷川直美

「とにかく明日から楽しみです」

鈴村律

「本当ですね、これが本当の勉強のような」


そんな期待感にあふれた女子高生たちを見送った華音は、リビングに戻り「ふう・・・」とため息をつく。


その華音にシルビアが声をかける。

「華音、お疲れさん」

「突然だったけれど、上手にまとめた」

春香も珍しくやさしい。

「ほめてあげる、なかなか華音にしては上出来」


華音は、下手に答えると、また叱られると思うので、黙って珈琲を飲む。

シルビアと春香も、結局気疲れがしたのか、同じように珈琲を飲んでいると、松田明美が入って来た。


松田明美

「華音ちゃん、さっき立花管理人から聞いたんやけど、シルビアと春香の女子高の文化祭にも出るん?」


華音は素直に答える。

「うん、そんな成り行きに、笠女郎の話」


松田明美は少し難しい顔。

「華音の学園の警備なら柳生事務所が完璧にするけどなあ」

「そうなると、うちが警備するかなあ」


華音は首を傾げた。

「そんな文化祭で警備って必要なの?」

「僕は出演するから会場直行で直帰」

「それにシルビアも春香もいるし、僕の学園の文学研究会も周囲を囲むよ」

「明美さんはいらない」


松田明美の難しい顔に、シルビアと春香も、首を傾げる。

シルビア

「要するに最近出番がないから、ジェラシーなの」

春香

「まあ、大人げない」


しかし松田明美は首を横に振る。

「いや、そんな状態ではないよ」と、タブレットを持ち出し、華音、シルビア、春香に見せる。


華音

「あれ?僕の学園の文化祭で・・・え?僕がスピーチしている動画?」

シルビア

「へえ・・・再生回数が・・・10万を超えている・・・」

春香

「華音が可愛いとか書きこんである、知らない間に超人気者?」


松田明美は、難しい顔。

「もし、シルビアと春香の女子高で、華音がスピーチをするって知れ渡ったら、どうなるのか、理解している?」

「見たいとか聴きたい人が殺到する可能性もある」

「それほど大きな会場を準備できる?」

「大混乱もありうるよ、それでも警備なしでやる?」


華音は考え込んだ。

「原稿だけにするかな、少なくとも他校で騒動の原因にはなりたくない」


シルビアと春香も、頭を抱え込んでいる。

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