第366話女性の心理を理解できない華音のお尻を、エレーナの右回し蹴りが直撃する。

今日は単なる顔合わせだったようで、語学レッスンの話は後日連絡になり、話題が変わる。


華音

「ところで、西荻と言えば、関東風中華蕎麦ですよね」

藤原美里はキョトン。

森田真由美は満面の笑顔。

「え?知っているの?わーー!こんなお屋敷のお坊ちゃまが?」

華音も笑顔。

「はい、ここのお屋敷の祖父も好きで、子供の頃はよく行きました」

森田真由美

「そうかあ・・・その話になると、急に食べたくなるよね」

華音

「そうですね、スッキリとしていながら、コクもしっかりある」

「醤油ラーメンの最高峰かなあ」

「麺は細麺、チャーシューは程よい薄め」

「メンマはシャクシャクと歯ごたえよく甘辛で」

森田真由美

「あらーーー・・・よだれが出てくる、食べたいなあ」


どうにも話に溶け込めない藤原美里は焦った。

「あの・・・えーっと、ラーメンのお話なのですか?」


すると華音は、申し訳なさそうな顔。

「ごめんなさい、藤原さん、すごく庶民の味で」

「横浜中華街で食べるような高級ラーメンとは違うんです」

森田真由美が華音をフォローする。

「とても、お嬢様が入るような店ではなくてね」

「本当に力仕事をしてきた人が、ビールを飲んで、ニンニクとニラのたっぷり入った餃子を食べながらとか」

華音の目が輝いた。

「そう、あの人たち、レバニラ炒めとか、本当に美味しそうに食べますよね」

「見ているだけでも元気になる感じ」

森田真由美

「あの半チャンラーメンも捨てがたいなあ」

「炭水化物爆弾と言われようが何だろうが、美味しいもの」


ここまで話が進んだ状態で、森田真由美と華音の内心は一致。

「上品で、街中華に一緒に入るのは可哀想な藤原美里には、帰ってもらって、お屋敷から西荻街中華に直行」というもの。

そして、森田真由美と華音も、「庶民の味」「上品ではない」と「肉体労働者向け」と、しっかり説明したので、藤原美里はスンナリと帰るものだと思っている。


ずっと黙っているしかなかった藤原美里が、口を開いた。

キッと森田真由美と華音を見つめて、

「あの、私も行きたくなりました」

「連れて行ってください」

と、断言となった。


森田真由美は藤原美里をけん制。

「あ・・・汚い店かも、服が汚れるかも」

しかし、藤原美里は目を大きくして笑顔。

「全くかまいません、面白そうです」


華音は、「そこまで言うのなら」と、立花管理人に内線連絡。

「あの・・・突然ですが、西荻のラーメンを食べに行くことになりました」

立花管理人は、少し笑った。

「そうですねえ、たまにはいいですね、予約します」

「お車も出しましょう」


さて、そこまで話がまとまった段階で、シルビア、春香、エレーナが入って来た。

華音が森田真由美を紹介しようとすると、シルビアが手で止めた。

シルビア

「森田さんとは、さっき顔合わせしている」

春香

「美里ちゃんとは、とっくに」

森田真由美も藤原美里も、華音がお屋敷に戻る前に、顔合わせをしていることがわかった。


そして、怖い顔になったエレーナが華音を手招きして、廊下に出して、お叱り。

「華音君!抜け駆けはダメ、マジに女扱いが下手、もっと平等に!」


華音は、困った。

「だって、街のラーメン屋だよ?それが何で女性扱いがどうのこうのに?」

その口答えの瞬間、エレーナの右回し蹴りが華音のお尻に直撃となっている。

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