第354話都内選抜空手選手に罵詈雑言を浴びる華音

順調な学園生活を続ける華音に、懸念されていたことが現実となった。

華音の通う学園に練習試合として来ていた、都内選抜の空手部数人が校庭で花壇の整備をしていた華音を発見してしまったのである。

そして華音の学園空手部主将剛の制止も聞かずに、華音に迫った。


「おい!お前!華音だろ!」

「そこで何をやっている!」


突然で、あまりの剣幕に華音は花壇作業の手を止めるしかなかった。

「はい、三田華音です、ここで花壇の整備をしているのですが」

「ところで、あなた方は、どちら様ですか?」


空手部主将剛が、華音に申し訳なさそうに紹介する。

「華音君、申し訳ない、止められなくて」

「この人たちは、都内選抜の空手部の人たち」

「華音に声をかけたのは、その主将の田村」

「都内、いや全国でもトップクラスの選手、今日は練習試合で、この学園に」


華音は、田村に頭を下げ、質問。

「ところで、僕は空手部ではありません」

「それは。ここの学園の剛さんに聞いているはず」

「ですから、僕がここで学園の花壇整備をしていて、どうして他校の空手部に声をかけられるのでしょうか」


そんな騒動が気になったのか、華音の学園の空手部の松井顧問が駆けつけて来た。

また、都内選抜の監督だろうか、一緒に駆けつけて来た。


華音の学園空手部松井顧問が、華音の前に立ち、田村を押しとどめる。

「田村君、華音は空手部ではないんだ」

「それに、学園の方針で、格闘系は当然、体育系の部活には入らない」

「今は文学研究会で、懸命に素晴らしい活動をしている」


その空手部顧問松井の言葉で、都内選抜監督が笑った。

「華音君、おれは都内選抜監督の前田だ」

「よく意味がわからないけれど、それはマジか?」

「お前、去年は圧倒的な力で剣道やら合気やらで全国一位だろ?」

「なぜ、その道を極めない?」

「それをさせない学園も学園だ」

「何を考えているのか・・・実にフヌケだ」

「華音もフヌケだ、男のくせに・・・文学研究会だと?」

「いい若い男が、本読み?」

「ふざけてるなあ・・・おい!それでもお前は男か?」

その前田の言葉で、田村以下、練習試合に来た都内選抜選手が笑い転げる。


ただ、華音は、途中から何も聞いていない。

華音の学園の松井顧問に「あの・・庭作業続けていいですか」と声をかけ、松井も頷いたので、庭作業に復帰してしまった。


しかし、その華音と、華音をかばう松井顧問の態度が、都内選抜の連中には気に入らない。


「おい!男のくせに、花いじりか?」

「あはは、情けねえ・・・」

「空気読めよ、このガキ!」

「俺らは、お客として来てあげているんだ!」

「おい、失礼って言葉を知っているか?」

「お前、文学研究会のくせに、字を読めないのか、意味がわからないのか」

「あはは!もう一度、幼稚園から、やり直せ!」

・・・・・

とにかく花壇作業を続ける華音に、罵詈雑言を浴びせ続ける。


その態度には、空手部顧問の松井、主将で血気にはやり勝ちな剛は顔を真っ赤にして耐えるのみ。

何しろ、学園の方針で、華音を格闘系はおろか、運動系の部活に参加させてはならないのだから。


また、そんな騒ぎを聞きつけて、グラウンドで練習をしている運動部の生徒たち、教員室からも教師たちが集まって来ている。


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