第323話奈良の系列学園で交流授業となる、そのテーマを考える。

授業時間中は、全く平穏に過ぎ、放課後となった。

華音が、文学研究会の部室に入ると、文学研究会の女子は全員、そして吉村学園長、顧問の田中蘭の姿もある。


少し驚いた顔の華音に吉村学園長。

「お母様の慶子さんからも、立花管理人からも連絡があってね」

華音は、すぐに内容を察した。

「はい、三連休を利用しての、奈良旅行ですね」

「母が急に我がままを申してすみません」

と頭を下げると、吉村学園長は笑う。

「いえいえ、それを少し考えようかと思ってね」


華音が首を傾げると、田中顧問。

「奈良旅行だけではなくて、系列校訪問、交流を深める目的も持たせたいの」

文学研究会部長長谷川直美が補足する。

「前から、奈良の系列学園、つまり華音君が前学期に通っていた学園の文化研究会の佐々木あきちゃんと、そうしたいねと、話し合っていたの」


華音は「はぁ・・・」となるばかり。


吉村学園長が少し具体的なことを言う。

「一日は、学園交流でね、あちらの学園で授業を受ける」

「人数からして、大教室での講義になるけれど」

田中蘭が華音の顔を見た。

「そこでのテーマを検討しようということなの」

「華音君は、あちらの学園のこと人も、よく知っているし」


華音は腕を組んだ。

「奈良の学園でも、こっちの学園でも興味があるテーマですよね」

そこまでブツブツと言って、華音はホワイトボードを引っ張り出してきた。


華音

「とりあえず、やってみたいことを全部書きましょう」

「それを分野別に整理して、奈良の学園と連絡をする」

「東京の人は奈良でなくてはわからない話を聞きたいとか、奈良の人は東京の話を聞きたいとかあるけれど」


部長の長谷川直美が華音の隣に立った。

「じゃあ、私が司会をするから、華音君は書いてくれる?」

華音は、「下手な字です」といいながら、ホワイトボードに「合同授業、希望するテーマ」と書いていく。


まず文化研究会女子が驚いた。

花井芳香

「習字の先生みたいな字、美しい」

佐藤美紀

「今度、美紀さんLOVEって書いてもらう」

志田真由美

「却下します、志田さんが大好きですに」

・・・などと、最初はなかなか進まなかったけれど、やはり学園長と顧問が同席していることもある。

内容がまとまりだした。


奈良でなくてはわからない話は、華音と長谷川直美が中心に案を出した。

「万葉集と明日香村」

「薬師寺とシルクロード」

「菅原神社と菅原寺、行基と東大寺」

「元興寺を中心にした奈良町の歴史」

「興福寺の阿修羅像など八部衆」

「春日大社と奈良の人々」

などが候補になり、奈良の学園と交渉することが決まった。


長谷川直美が文学研究会の面々に声をかけた。

「当分、華音君と一緒に交渉することになります」

「何しろ、共通の知人もおりますので」


しかし、「華音君は独占禁止」と、文学研究会の面々は怒り顔になっている。

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