第296話華音に高校生国際平和親善大使の依頼

野球部原島との一件、そして学園レストランでのバニラアイスパーティーを終えた華音は、いつものごとく生徒たちにかこまれて最寄りの駅まで歩き、その後は雨宮瞳と井の頭線で帰宅の途につく。


雨宮瞳は井の頭線に乗り込むなり、スッと華音に寄り添う。

「お疲れ様、華音君」

華音は、少し顔を赤らめる。

「いや、特に普通に接しただけ、金属バットをかわす前に、原島さんが転んだ」

とても、「裏柳生の技」を使ったとは言わない。


華音と瞳は、久我山駅について、いつものごとく仲良く手を振り合って別れた。

すると、珍しく、柳生事務所の華音警護役の井岡スタッフが、華音の隣を歩きだす。


華音は首を傾げた。

「井岡さん、何か発生?」

井岡スタッフは、頷く。

「うん、お屋敷に入ればわかるけれど、大物が2人」

華音は、その意味深な言葉に首を傾げるけれど、お屋敷までの距離は短い。

結局、それ以上は井岡スタッフに聞くこともなく、お屋敷に到着した。


立花管理人がいつもより威儀を正して、華音を迎え入れる。

「華音様、お客様がお2人、お待ちしております」

華音は、素直に頷くと立花管理人が華音に耳打ち。

「官房長官様と文部科学大臣様がおいでです」

華音は、少し驚く。

「御用件とか、言っていたのですか?」

立花管理は首を横に振る。

「はい、一応お伺いしましたけれど、直接にとのことです」


華音はそれでは、仕方が無かった。

そのまま、応接室に進み、ドアを開ける。

「三田華音です、大変お待たせして申し訳ありません」

確かに懇意の官房長官と、テレビで見ただけの文部科学大臣が室にいる。

華音は、深く頭を下げる。


「いやいや、突然、伺ったのはこちらのほうで」

官房長官は立ち上がり、華音に握手を求める。

文部科学大臣も同じように立ち上がり、華音と握手をする。


ソファに座ると、その政府の大物二人からの話が始まった。

官房長官

「本当に様々な危険な事件を解決してくれて、本当に感謝します」

「鎌倉では、相当危険な状態になったとか、総理も真っ青な顔で心配されていて」


華音は、柔らかな笑み。

「いえ、もう大丈夫です、ご心配はいりません」


官房長官が文部科学大臣に促し、文部科学大臣が華音に話し出す。

「実は、突然の話で申し訳ありません」

「華音君に、ひとつ仕事を引き受けてもらえないか、ということです」


華音が身を乗り出すと、文部科学大臣。

「高校生の国際平和親善大使という仕事・・・国を代表する高校生として、各国の高校生と交流したり、国連でスピーチをしたり、もちろん各国へ視察旅行をするなどもある」

「それにかかる経費は、全て日本政府に任せて欲しい」


華音は、いきなりの大きな話なので、目をパチクリ。

「・・・となると・・・英語は当然、フランス語、ドイツ語、中国語・・・」

「かなり大変な話ですね」

まずは外国語が気になったようだ。


すると官房長官が笑う。

「大丈夫、英語をしっかりしていれば、それほど問題はない」

「会話くらいは大丈夫だよね」


華音は、頷く。

「はい、子供の頃から、徒手格闘の潮崎先生からしごかれまして・・・」

「奈良の実家には、常に外国人が何人か住んでいましたけれど」


華音は、この時点で、とても「逃げられない」と判断している。


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