第228話華音の母と瞳の母の関係 華音とお風呂に入りたがるお姉さんたち

やさしく微笑んでいた好子が華音に、

「ねえ、華音君、都内に出て来てから、一度もお母様に電話していないんでしょ?」

と声をかけると、華音は素直に「はい」と頷く。


好子は、やれやれと言った顔。

「母親は心配なの、華音君はしっかりしていると言っても、まだ15歳」

「電話で声を聴かせてあげたら?」


瞳も、素直に華音を見て頷いている。


好子の話が続く。

「慶子さんは、先々代、つまり華音君のお祖父様の御長女」

「会社自体は、御長男さんの晃弘さんが受け継いだけれど」

「それで、私と圭子さんは、高校と大学の同級生」

「シルビアさんと春香さんの通う学園と同じ」

「ずっと仲良しで、それもあって、私はお祖父様の貿易会社に就職」

「会社でも、同僚」

「それで、華音君の奈良のお屋敷にも、行ったことがあるの、その時は社員旅行だったけれど」


華音は、一つ一つ、神妙に頷いている。

瞳は、内心、「これは素晴らしい御縁だ」と、思っている



さて、好子の話の切れ目で、華音は再び頭を下げる。

「今日は瞳さんを長い間、ありがとうございました」

「この次には、お母様も、ご招待いたします」


好子は、その華音に笑顔。

「さあ、なるべく早くお屋敷に」

「お屋敷についたら、お母様に電話なさい」


華音は、再び好子と瞳に、笑顔で頭を下げ、お屋敷に戻る。

それでも歩きながら、様々思う。

「母さんか・・・心配していたんだ」

「父さんも祖父さんも厳しいけれど、母さんだけはやさしい」

「時々、うるさいくらいに、心配してくる」

「それにしても、瞳さんのお母さんと、母さんと知り合いだったんだ」

「少し聞いてみるかなあ」


・・・とまでは、華音は神妙だった。


いきなりスマホが光った。

華音はスマホを見るなり、ため息。

そしてタップした途端、シルビアが大騒ぎ。

「華音!さっさと帰ってきて!」

「面倒なの!松田明美と今西圭子、エレーナまで加わって、早く来いって!」


華音が「バトルって何さ・・・」と首を傾げていると、春香の声も聞こえて来た。

おそらくシルビアのスマホを奪い取って話しているらしい。

それでもシルビアよりは冷静。

「シルビアの言う通り」

「エレーナが突然、華音とお風呂に入りたいって言いだしたの」

「そしたら、今西圭子と松田明美も同調したの」

「華音のお尻の呪印と胸の呪印の話まで広がって大騒ぎ」


華音は、途中で話を聞いていない。

そして、超面倒な気分。

「はぁ・・・マジで奈良に帰りたくなった」

「どうして、お姉さんたちは、僕の裸を見たがる?」

「見世物ではない」

「その見世物ではないのに、ジロジロと見る」

「ジロジロ見るだけで済まなくて、あちこち触ってくるし」


そして奈良の母を思った。

「こんなこと、母さんに言えないって」

「また、心配させちゃう」


華音は、見え始めたお屋敷を見ながら思った。

「たまには一人でお風呂にゆっくり入りたいし、眠りたい」


ただ、その思いは、とても実現しそうにはないと、理解している。

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