第215話エレーナと華音の祖父の約束?
シルビアが華音に質問する。
「華音、エレーナさんの字がわかったの?」
華音が頷くと、今度は春香。
「普通のローマ字ではないでしょ?」
華音は、表情を全然変えずに答える。
「うん、昔、お祖父さんに教えてもらったことある」
「といっても、さわり程度だけど」
「ドラキュラとか、その当時の中欧、西欧、北欧、トルコ情勢とか」
「当然、ドラキュラ伯爵の話も少し入る」
「黒魔術は、東京のお祖父さんの書籍にもあるし、奈良の祖父さんも持ってた」
華音の話を目を細めて聞いていたのが、外務官僚の高井。
「さすがですね、お血筋と言うのかなあ、世界を股にかけて大活躍した先々代と、南都奈良から京都まで学術と宗教界のドンと言われた奈良のお祖父様の血を引き継いでいらっしゃる」
華音が、その外務官僚高井に尋ねる。
「あれ?高井さんは、僕の両祖父をご存知で?」
外務官僚高井は、満面の笑み。
「はい、まずは東京のお祖父さんに徹底的に鍛えられ、奈良のお祖父さんに引き合わされ、そこでもしごかれました」
「日本文化を諸外国にしっかり発信するには、まず日本文化の理解が必要なのに、お前は全く不足しているとかって・・・華音君の両祖父から、もう厳しいのなんのって」
華音がその答えを受けて「へえ・・・」となっていると、エレーナが華音に微笑みかける。
「華音君の東京の、つまりここのお屋敷のお祖父さんとは、私、小さな頃から知りあいなんです」
華音が今度は「え?」という顔になると、エレーナは顔が真赤。
「小さな頃は、華音君のお祖父さんがルーマニアにワインの買い付けで来ると、一緒に遊んだり」
「プールに入ったり、お風呂に入ったり・・・」
「もう、私、華音君のお祖父さんの大ファンでした」
華音がますます「へえ・・・」という顔になると、エレーナが華音に突然ウィンク。
「お祖父さんと遊びながら、華音君の話をずっと聞いていたんです」
「だから、子供の頃から、華音君にずっと逢いたかった」
「だから、今日は逢えて本当にうれしい」
華音も、シルビアも春奈も、この時点で全く声が出ない。
また、華音に付き添って来た雨宮瞳や文学研究会の女子たちも、エレーナの話に、ただ聴き入るばかり。
するとエレーナは、ますます調子が出て来た。
「私ね、華音君のお祖父さんと、三つの約束をしたの」
華音と、その他の人の注目がエレーナに集まると、エレーナはうれしさ満点の顔。
「第一は、今日のこと」
「華音君に、ルーマニアの料理を食べさせてあげること」
「もう、ほとんど準備はできています」
華音は、またしても押され「はぁ・・・」と答えるしかできない。
エレーナは、ますます顔を赤らめた。
ということは、第二の約束を言うようだ。
ただ、よどむことはなく、スラスラと言い放つ。
「あのね、第二はね、恥ずかしいけれどね、華音君と日本風のお風呂に一緒に入ること、家族風呂っていうのかな」
しかし、それを聞いた華音が、いきなり硬直した。
「う・・・あの祖父さん・・・いったい・・・」
と唸るのみ。
そして、シルビアと春香にいたっては、「お口あんぐり」状態。
ただ、雨宮瞳と文学研究会女子は全員、血相が変わっている。
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