第190話テロは失敗。松田明美と華音がテロリストたちに対峙する。
「二分後」となった。
旧国鉄系テロリスト集団の計画では、吉祥寺駅が炎上を始める時間になる。
しかし、吉祥寺駅と至近の距離にある、ここのホテルには何の騒ぎも聞こえてこない。
「おかしい・・・消防車とか救急車のサイレンがけたたましく鳴り響くはずなのに・・・」
「雨が降って火がつかないのか?」
「いや、雲一つない、ありえない」
「・・・見張りに連絡しようにも、通信が不能・・・」
テロリスト集団が動揺する中、松田明美は根津ホテルマンに目で合図。
すると、根津ホテルマンが手に持ったリモコンを操作。
「うわ!」
「何だ?」
「これ・・・鉄格子?」
テロリスト集団は、また動揺する。
彼らのいるフロアの天井から目の細かい鉄格子のようなものが、するすると下がってくる。
「う・・・前後左右?」
「うわ・・・完全に閉ざされた!」
「何だ?ここのホテル!」
四方からの鉄格子に閉ざされて、ますます動揺するテロリスト集団に向かって松田明美は、歩を進め、そして厳しく大きな声。
「おい!そこの暴力主義革命テロリスト集団!」
「警察だ!」
「お前らの程度の悪いタクラミは、すべて失敗だ!」
「吉祥寺駅の炎上だと?」
「は?全て順調に列車は動いているよ!」
「警告メール?」
「ふざけんじゃないよ!」
「とっくにお前らの仲間をしょっ引いて、出来ないようにしてあるんだ!」
「のん気にホテルなんかに集まっているうちに、全ておジャンだよ、お前らのタクラミなんて!」
しかし、テロリスト集団の中のトップらしい男が、懸命に反発する。
「何だと?警察?」
「警察が善良な市民に対して、こんなことをしていいのか!」
「人権侵害じゃねえか!」
「逮捕状も何もなく、民間のホテル施設で監禁って、何事だ!」
しかし、松田明美は、一歩も引かない。
「は?善良な市民?」
「あんたたち、頭悪いねえ!」
「あんたたちの見張り役の仲間のスマホから、全てお前たちのデータからテロ計画から何から調べ済って言っただろ?」
「それから、その黒くて馬鹿でかいバッグの中身もね!全て見張り役が白状したよ」
「ヤッパとオハジキもって、何するつもりだったんだい!」
「善良な市民が、そんなものを持って仲良く集合するのかい!」
松田明美が、そこまで話した時に、いきなり華音が進み出た。
松田明美が、驚いたような顔をするけれど、華音はテロリスト集団に向かって話しはじめてしまう。
「あの・・・僕は、ここのホテルの関係者の一人なんです」
「ホテルは、人に安らぎと楽しみを与えるべき場所と思うのです」
「そういう場所に、人を傷つけるとか、殺める武器を持ち込むとか」
「大量殺人計画とかの話はして欲しくないんです」
「何が面白くて、そんなことをするのか、よくわからないのですが」
華音の声は、静かな声。
しかし、いきり立っていたテロリスト集団の男たちは、何故か素直に聞いている。
華音は、言葉を続けた。
「そのままでかまいません、少し見ていただきたいものがあるのです」
華音は、そこまで言って、根津ホテルマンに目で合図をしている。
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