第158話華音の本質

華音とお姉様方は、もう一度ホームレス三人の手を握り、声をかけた。

華音

「まずは病院で身体を休めてください、お金の心配はいりません」

シルビア

「全て、私たちにお任せください」

春香

「具体的な連絡は、そこに立っている柳生事務所を通じてお願いします」


ホームレス三人が恐縮していると、柳生清。

「大丈夫です、決して悪いようにはいたしません」

年輩の佐藤警察官からも声がかかった。

「私からも保証します、安心して、まずは身体を治してください」


ホームレス三人がホッとした顔になったのを確認して、華音とお姉様方は、ようやく現場を離れて散歩を再開した。


華音

「心配で見ていられなかった」

シルビアが珍しくほめる。

「さすが薬師様、目力だけで相手を拘束」

春香は一言ある。

「決して華音だけの力ではないの、薬師様の御助力なの」


華音は、そんなことを言われても、素直。

「そんなの当たり前だよ」

そして、少々分析らしきことを言う。

「でもね、これって、警察にも、柳生事務所にも有益」

「ホームレスの人って、案外貴重な情報を持っているかもしれない」


シルビアも、その分析には同意する。

「借金といってもね、証文なんてない」

「ヤミ金融の一種、無理やり金を貸しておいて、あとで法外な利息を取る」

「後は暴力を使って脅す」


春香も続く。

「競馬とかパチンコ、飲みやでお金が無くなって帰ろうとしたら、何万円か貸すよって、渡す」

「そして、メチャ高い利息、払っても払っても、それを認めない」

「しまいにはキャッシュカードも取り上げてしまう」

「そして奪い取ったお金が、ヤクザの資金になる」


華音が話題を変えた。

「それでさ、信頼できる人なら、健康を回復した時に職を紹介したい」

「警護人としてでもいいかな、お屋敷とか学園の」


シルビアも、即同意。

「訓練は柳生事務所で、全く問題ない」

「あくまでも、あの三人のホームレスが信頼できるというのが、前提」


春香は、少し考える。

「おそらく、あの人たちの、心の修復も大切」

「何で、ホームレスになったのか、必ず心の傷がある」


華音は、シルビアと春香の顔を見た。

「とにかく、こういうのも縁だと思う」

「困っている人、苦しんでいる人は、出あった限りは救いたい」

「御仏の心と思う」


華音の意見に、笑って頷くシルビアと春香を見て、今西圭子は感じた。

「華音の本質は癒し」

「格闘が強いとか、観音の分析力を使えるなんてのは、癒しを支えるためのこと」「シルビアも春香も、それを理解しているから、華音が癒そうと本気になった時は、すぐに一体となる」

「これはこれで、素晴らしいものだ」


・・・ただ、そんな今西圭子の感動も長続きはしなかった。


シルビアの表情が元に戻った。

「華音、ソフトクリームが食べたい」

春香は、ムッとした顔。

「チリドッグナンは?」

今西圭子も、突然、空腹を感じた。

「お団子食べたい」


華音は、またしても呆れ顔になっている。

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