第145話書庫改造計画と華音

別室での女性たちの会議も終わり、華音は屋敷の従業員の運転する黒ベンツで、萩原美香を久我山駅まで、瞳を自宅に送り届けて、戻って来た。


家に入ると、立花管理人。

「すでに柳生事務所の清さんと隆さんが洋館に入っています」

シルビアも寄って来た。

「しっかり、お礼は言ったの?」

春香も続く。

「特に瞳ちゃんには、甘い言葉の一つくらいはかけたんでしょうね」


華音は、特に春香の言葉には「え?」となるけれど、反応が今一つ。

立花管理人に、「じゃあ、洋館に」と言って、スタスタと歩きだす。


すると途端に、シルビアと春香から文句。

シルビア

「こら!華音!ごまかさない!」

春香

「ほんと、評価できるのは格闘だけ!後は落第!」

結局、シルビアと春香も、華音の後に続いて洋館へと歩きだす。


立花管理人は、その三人のやり取りが面白いらしく、プッとふき出している。



さて、華音としては、シルビアと春香の反応になどは、かまってはいられない。

何しろ、自分が託された書籍の保管場所の工事なので、本来は、まず自らが意見を述べなければならない。

そのため、途中から小走りになって洋館に入った。


華音が洋館に入ると、二階の窓から見ていたのか、柳生隆が階段を降りて来た。


柳生隆は笑っている。

「はい、華音、書籍整理お疲れ様」

華音も笑う。

「はい、皆様のご協力を得まして」

柳生清も二階からおりてきた。

「ああ、華音君、さっそくはじめようか、だいたいの検討案は作ったけれど」

「書籍の分類も、大広間にあるので、見せてもらった」


華音は、柳生清には、深く頭を下げる。

「ありがたいことです、よろしくお願いいたします」

柳生清は、笑って首を横に振る。

「いやいや、超レア本ばかり、これは守らないとね」


柳生隆が華音の顔を見た。

「それでね、華音、一階よりは二階のほうがいいかなと」

「華音の寝ている部屋にも近いし、警備上ね」


華音も、素直に頷く。

「そうですね、一々、一階におりるよりは楽ですね」

「賊が侵入しても、対処がしやすい」


そんな話が簡単にまとまり、一行は二階にのぼった。

華音が寝室兼勉強部屋で使っている部屋の隣の部屋が、書庫の候補部屋らしい。

その部屋に入って、柳生隆

「賊の侵入については、お屋敷の四方を柳生事務所がモニターと人間により監視する」

「それから万が一の外からの火災を考慮して、書庫は全面完全耐火にしようかと」


華音は、フンフンと頷く。

「後は、書籍管理用のPCとか、コピー機とかでしょうか」


柳生清が答えた。

「それは当然、全ての書籍を万が一のために、電子画面に取り込むことも必要だと思うよ、多少、紙そのものの劣化も始まっている書籍もある」

「そのための装置も発注する」


華音は、そこで思った。

「すっごい面倒で神経を使う作業だなあ」

「書籍整理の数倍、神経を使いそう」

「何しろ、千冊を超える、ページ数は?」

華音は、それを思って、少々クラクラとなっている。

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