第130話書籍作業開始と華音の「分類力」

華音が託された1000刷以上の書籍の整理に参加する全員が、華音の住む洋館の大広間に集まっている。

華音は当然として、シルビア、春香、立花管理人と屋敷の男性従業員3名、雨宮瞳と担任の萩原美香、文化庁から今西圭子と、その同僚の女性が二人、総勢で10人以上となる。


華音が、全員の前で、少々顔を赤らめて挨拶をする。

「おはようございます」

「本日の作業にご協力という事で、お集まりいただき、心より感謝申し上げます」

「本来であるならば、この書籍を託された私が全て整理等行うべなのですが、何分、やりきれなく時間がかかるということもありまして」


華音が「そんな事情」を語るけれど、それについては、大広間に積み重ねられた書籍段ボールの山を見れば、誰しも一目瞭然。

シルビアが華音の脇をつつく。

「華音、役割分担を発表しなさい」

春香も、厳しい。

「ゴチャゴチャ言わない、役割分担をしなければ作業できない」


華音は、素直に、シルビアと春香の助言を聞く。


「はい、それで、誠に申し訳ないのですが、今から作業工程と役割分担等を発表します」

「私と今西圭子さん、萩原担任、立花管理人以外の人は、まず、段ボールをそのまま台車に乗せて、私の所に持って来てください」

「そこで、私と今西圭子さん、萩原担任の三人で書籍の分類を決定」

「それから立花管理人の指示に従って、和歌、物語、歴史、洋書等に分類された、より大き目の台車に乗せ換えてください」

「重たい書物は、ここのお屋敷の男性従業員がお手伝いをいたします」


華音は、ここで、少し間を置いた。

そして、少し顔をやわらげる。

「作業終了後には、大風呂と料理の準備がございます」

その言葉で、全員の顔が、一瞬なごんだことを確認して、はっきりとした指示を出す。

「では、はじめてください、よろしくお願いいたします」


その、華音の指示で、作業が始まった。


作業そのものは、実ににスムーズ。

段ボールが分類係の華音、今西圭子、萩原美香の前に来ると、即分類。

分類、分類番号、書籍名、著者名、寄贈者名を華音がPCに打ち込んでいく。


萩原美香は、書籍を分類しながら、、本当に面白く感じている。

「すごい・・・超貴重な・・・レア本ばかり」

「藤原定家の書籍も多いなあ」

「これは西行?あら・・・読みたい」

「うわ・・・万葉集の写本?ここにもあったんだ」

「源氏の写本と研究書・・・これは室町期?」


また、文化庁の今西圭子の目も輝いている。

「すっごいなあ・・・これ・・・紀貫之?」

「鴨長明の発心集の写本だ・・・今見たい」

「式子内親王様の歌集もある」


ただ、台車に乗せられ持って来られる段ボールは、和書だけではない。

華音の東京の祖父が収集した、様々な洋書もあるし、それも即座に分類しなければならない。


しかし、華音の分類は早い。

洋書が持って来られても、即座に文学書、歴史書、宗教書などに分類。

分類番号、書籍名、著者名、寄贈者名を華音がPCに打ち込んでいく。

アルファベットも様々、ギリシャのような文字もあるけれど、華音は苦にせず、PCに打ち込んで行く。


「ホメロス」「マキアベリ」「シェークスピア」「神学大全」「ダンテ地獄変」

「プラトン」・・・萩原美香と今西圭子は、何となく読み取れたのはその程度、

他の本は、全く理解の範疇にない。


今西圭子が、少しあ然となる萩原美香に笑いかける。

「華音君は、将来、図書館司書になって、図書館長もいいかも」

「薬師様兼・・・観音様かなあ」


萩原美香は、その言葉に素直に「うん・・・その道も」と納得してしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る